ビジネスの名著と知られる『7つの習慣』。知ってはいても読んだことはない人は、多いのではないでしょうか。
本は苦手、ビジネス書はカタそうでもってのほか、しかも492ページ(?!)、とてもとても…。読んでない理由はいろいろだと思います。
なら、いかがでしょう。「読んでもないのに読書会」というのは。
1ページも読んでなくても話し合える不思議な会。実験的な試みとして行われた、1時間半の未知の読書会について紹介します。
「読んでもないのに読書会」とは、名前のとおり読んでもない状態で、一冊の中身を想像し、推理し合うイベントです。以下のように、進めていきます。
1.お題本の、最初の1ページを読みます。
2.次に、目次タイトルだけ見て、中身を推理します。
3.すでに知っている内容があればシェアします。
4.ヒントとして、各章1度だけページ数を指定して、読むことができます。
5.時間を区切って、最後まで進めて、終了です。
参加者は、プレイヤーと、進行役のゲームマスター(1名)に別れます。ヒントの音読係も、ゲームマスターが務めます。
ゲームとしてのゴールは、推理の結果が、いかに本物の中身に近づいているか。限られたヒントから、できるだけ正しい中身を想像していきます。
もしかしたら、ここまで読んで、本好きの中には「あぁ」と気づいた方もいるかもしれません。「読んでもないのに読書会」には元ネタがあります。
「『罪と罰』を読まない」という本です。
作家など、本に関わる著者4名なのに、『罪と罰』を読んだことがなかったことから、“前代未聞の「読まずに読む」読書会”が開催され、その模様が収められています。推理する前半と、それを踏まえて読んだ後の解答編的な後半とに分かれています。
ここからヒントを受けたのが「『7つの習慣』読んでもないのにオンライン読書会」です。
『7つの習慣』は、マンガ版もありますし、ネットで検索すれば「○分で分かる」といったものも少なくありません。
ということは、それだけ、敬遠(あるいは挫折…)した方は少なくないはず。
分厚さなどから読まない人が多いのは、ちょっともったいない。ならば、読むきっかけづくりとしてでも、ということから選ばせてもらいました。
進めるうえで、本家「読んでもないのに読書会」は、最初と最後の1ページを読むところから始めていました。ですが、『7つの習慣』は難しい言い回しと内容に関わらない挨拶文などもあり、はしがきはゲームマスターが抜粋して用意しました。また、目次タイトルは、タイトルと1行目のキーワードを書き入れたパワーポイント・スライドを作りました。
そして、いよいよスタート。
この実験的な試みに参加したのは5名。Zoomを利用して、オンラインで実施しました。
自己紹介の際には「『7つの習慣』を知ってる?読んだことある?」に答えてもらうことに。
「買ったんですけれど、積読してます…」
「知ってはいるんですけれど、読んでません」
「…持っています(笑)!」
と、想像どおりの回答が。初対面の方がほとんどでしたが、妙な連帯感が生まれたかもしれません(笑)
進行は、「第一の習慣」から順に。
参加者は、「第一の習慣 主体性を発揮する」には…
「書いている人って何人ですか?」
「自分自身を顧みなさいって、ビジネス書のよくある流れですよね」
「第二の習慣 目的を持って始める」には…
「いや、目的無しに、まず行動することも大事じゃないですか?」
「自己リーダーシップって、造語ですよね」
コヴィー博士、形無しの発言続出(笑)。
本家の「『罪と罰』を読まない」も、ドフトエフスキーが“ドスト”、ラスコーリニコフが“ニート野郎”と呼ばれていたりと、失礼極まりないので(スミマセン)、この流れも予想通り。
それでも、「ビジネス書だと思ってたら、結構、人生哲学みたいに、生活でも役立つ内容?」など、核心を突いた発言もありました。
それでも、やはり序盤は、なかなかルールに馴染めない参加者たち。なんせ初めてですから。
少しずつルールが分かってくると、面白くなってくるのがヒントです。
1ページを読み上げるという単純な仕掛けが、意外と理解を助けてくれます。
『7つの習慣』の第三の習慣には「大事を小事の犠牲にしてはならない。」とあります。そして、第七の習慣には「時々、小さな事から生じる大きな結果を考えると、小さな事はすべて大きな事に見えるようになる。」。
参加者からは「あれ?この“小事”と“小さな事”は同じ?」という疑問が。
そこでヒントに選んだページには、「~効果的な自己マネジメントの習慣である第三の習慣が必要となる。~」の記述が!
「第三の習慣、出てきた!」
「やっぱり、関係あるってこと?!」
ちょっとした偶然が、場を盛り上げました。また、ちょっとネットで検索した情報をシェアしたり、おかわりヒント(もう1ページ読み上げる)など、ゆるく進めることも一つのポイントだったように思います。
終盤は、初対面だった参加者同士も名前を呼び合い、推理し合い、うなずき合う様子が見られました。
参加者の感想をいくつか紹介しましょう。
「やったこともなく、新しかった。他の方の意見とか考え方が、自分と違う視点があると思うのですごく参考になりました。」
「目次が頭の中に入り、気になる章とかも出てきた。ちゃんと読みたいなっていう気持ちが、今すごく湧いています。」
「もちろん、ちゃんと読むやり方もありますけれど、この、間(あいだ)を想像していく読み方も、面白かったです。」
誤解ないように付け加えれば、あくまで500ページ近い本の一部を抜き出し、推理しただけに過ぎませんから、「『7つの習慣』を理解した!」とは言えません。
ですが、「自分は小事にかまけているかも、家事とか、メールの返信とか…」と自分の中から具体的な例を持ち出して共有している様子には、やはり学びがあったのではないかと感じます。
第一、ビジネス書の目次は非常に考え込まれているため、しっかり時間をかけて読み込むだけでも、案外中身が入ってくると言えるかもしれません。
本を一冊、ちゃんと読み切ることが、苦手な方もいるでしょう。ですから案外、こうした、ゆるい入り方もおすすめです。
それぞれのやり方で進化させられる可能性が「読んでもないのに読書会」にはあるように思います。